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納得できない話。~解体工事の矛盾~

今回は、建設業許認可業務に携わってきて、現在進行形な?なハナシ。

それは、「解体工事」のお話。

去る令和3年6月末に時はさかのぼります。
当時、平成28年7月に施行された29業種目の「解体工事業」で、「みなし許可」というものがありました。

当時の解体工事業許可を得るための専任技術者の要件は2つ
⓵指定資格を取得していること
⓶とび・土工の実務経験を有していること

ただし、みなし期間の満了(令和3年6月末)までに新設された「登録解体工事講習」を修了しておかないと、
要件は失効しますよ、という注釈付き。

理由は、指定資格は設定したものの、その学科内容に解体工事が含まれていないため、期間中にその内容を補填するための講習を受けておいてくださいという流れでした。

ココでポイントなのは、この講習を受ける要件として、「有資格者」であること。
つまり、実務経験者(上記⓶)で解体工事業をみなし許可として得た業者は、
期間内に勉強をして資格を取るか、条件のあった人材を雇いなさい、ということになりました。

「実務経験10年」や「登録解体工事講習対象外の資格」で解体工事業を「みなし許可」として取得していらっしゃる業者は、有資格者への変更をしなければ、許可を失う事態。同年3月の段階では、慌てて民間資格である解体工事施工技士の取得を呼びかけるよう、話が出てきました。お手盛りな感じですが。

経験でなく、資格を取れ。今までの仕事では何も言われていなかったのに、許可を維持したいなら
寝る間も惜しんで勉強しろ、というわけです。

御上の言うこと、従わざる負えません。ただ、その前に大事なことが机上から漏れているのでした。

どういう話かというと。

根本的な話として、建物のリフォームやリノベーションの際に発生する解体工事、いわゆる「内装解体」が建設業許可上、解体工事の範疇ではない、という取り扱いが混乱の種。それに、解体工事業の定義を「工作物の解体」としか規定していないために、「解体=一棟建物の解体」のみが対象とされる「ターゲットの狭さ」や、そもそも、それでは「下請け工事としての解体とは何ぞや」に全くと言っていいほど答えがない状況を放置していること。「一棟全体の解体」なんて、ほぼ施主からの元請工事しか受ける可能性はないですから。

ちなみに、「内装解体」は前提工事の把握として「内装仕上工事業」に区分されるとのこと。
 
いやいや、それじゃ「現場」と認識が違いすぎる。百歩譲ってルール上そうなら、発注者ならびに元請さんに周知しているのか。いまだに、その内容は「解体工事業許可」を求められ、かつ「下請工事」として、当然に施工されています。

現場で解体工事業許可を持ってこいと言われ、申請をしてみたら、自分たちの仕事は解体ではないから認められない、と言われる。これが今現在起こっていることです。

解体工事業許可がなかった時代(平成28年6月以前)は、解体工事は「とび土工工事の範疇」とされ、500万円に満たない工事ばかりの場合は、許可まで必要なく、都道府県管轄の「解体工事業登録」を受けていればよいという運用となっていました。ここで問題なのは、解体工事業登録は基本ルールが建設業法ではないこと。環境省の建設リサイクル法であるということ。解体工事業登録では、先の「内装解体」も主要業務の一つとして捉えられていました。それは今も。

基礎としているルールが違うから。その一言で済ませる状況ではありません。許可を生み出す段階で、この事態は想定できたはず。でも、小規模として切り捨てた感は否めません。事業規模としては小さいものかもしれませんが、それを「事業者数」としてくらべると、小規模事業者の方が圧倒的に業者数の多い解体工事業界において、その影響の重大性は反転します。

で、平成28年6月に解体許可ができました。500万円以上の施工ならば、許可が必要。登録業者さんはこぞって許可を取得しました。解体工事業登録には「土木工事、建築工事および解体工事の許可を取得した場合は、登録を取り下げないといけない」というルールが課されており、許可取得に伴い、そうした業者は登録を取り下げることになりました。

で、ふたを開けてみたら。自分たちの仕事は解体工事ではないと言われる業者が発生することに。内装解体は建設業法上の解体工事ではないと。とって来いと言われ、わざわざ取った許可は、ルール上は無駄な許可。かえって解体工事業登録のままのほうがこれまで通り仕事ができる、という露骨な「梯子外し」が行われました。

しかも、なら過去の実績(内装解体)で実務経験10年として内装仕上工事業を取ろうとしても、過去の解体工事は「とび・土工工事」の範疇だから、他業種間移動はできないとされ、内装仕上工事の実務経験をしてカウントできないとされました。実際に内装解体工事をしていても、実務経験としたいなら、これからは内装仕上の工事として積み上げて、単純には10年後ね、それが嫌なら該当資格取っておいで、というわけです。

これほど、現場を軽視した「自分たちが手を汚さない取扱」はないと私は今でも思っています。

解体工事業の維持を進める以前に、実務に沿った「解体工事とは何ぞや」を整備するべき、これまでの現場に全くそぐわない、「許認可としての解体の狭義」を改めない限り、何の解決にもならなりません。頭でっかちの机の上でしか考えないルール係とそれに口出しできない実務畑、結局不都合は現場が強引に形に合わせる、現場が苦労する図式が変わらない。

許認可を預かるものとして、これは許しがたいです。現場の状況をまるで無視している。現場での常識ではないことを、机の上だけで決めている。で、現場を見ずに、いうことを聞けと。で、現場への周知はしない。

重ねて言います。発注者でもある公共からすれば、星の数ほどいる業者の「事業規模割合少数」のことなど、取るに足らないのかもしれませんが、被害を受ける「事業者数」にすれば、結構な数に上ると思われます。実際に現場をじかに触る「下請業者」に直撃です。その現場の手を減らすかもしれない事態を、認識しているのでしょうか。

現在進行形で進む、現場軽視。こうした勝手矛盾を排除しない限り、業界の安定はないと思います。